自キにまつわる気持ちの問題と、1年半ぶりにEnd Gameを更新したSandyLPのご紹介

Takeshi Nishio

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この記事はキーボード #2 Advent Calendar 2024の5日目の記事です。

昨日は🌧️2d0さんの「"kokken72"についてのお話を」でした。
ハード・ソフト両方へのこだわりが、そのまま形にできている技術力に脱帽です。

明日はis_wateringさんの「今年設計したキーボードについて」です。


まえがき・もくじ

RP2040を基板に直乗せするとか、Vialなファームウェアの作り方とか、すでにどこかで解説されているので技術的なネタがありません。

というわけで、自キにまつわる気持ちの問題(精神論的な何か)をいくつかと、1年半ぶりにEnd Gameを更新したSandyLP(サンディ エルピー)について書こうと思います。

自キ道(じきどう)

数年前、Jonesの開発中に、右手のアルファ部を外側へずらしたレイアウトを思いつきました。

アルファ部を外側へずらしたレイアウト

全体を左右対称にでき、Enterが打鍵しやすくなり、肩も楽になるなどのメリットがありましたが、自作キーボードにありがちな「YとBの右手?左手?問題」にぶつかってしまいました。
今では考えられないことですが、その頃(2020年)の僕は、たまにYを左手で打鍵する癖がありました。

このときの開発メモには、次のような思いを書いていました。

「ハード面、ソフト面だけでなく、自分自身の改良・変更をおこなうのも自キ道の範疇に含まれると考え、今回は左手Yの癖を矯正することにした。」

自キ道(じ・き・ど・う)(笑)

その「自キ道」を貫いた結果、1週間ほどで指使いを矯正することができ、レイアウトはめでたく採用となりました。
それ以来ずっとこのレイアウトを使い続けているので、1週間修練したおかげで、4年ほど肩が楽に過ごせたことになります。

この話以外にも、
左右のシフトキーを取り外して力技で親指シフトに移行したり、
レイヤーに入れた数字や記号を何も考えずに打鍵できるようにしたり、
スキーで右肩を脱臼したついで(ついで?)に左手でマウスを使えるようにしたり、
…と、いろんな自キ道がありました。

キーボードやマウスは道具ですから、その道具を使う人間の修練や鍛錬もある程度必要ですよね。
ましてや、1~2週間で身につけられるのであれば、今すぐ自キ道を始めた方がお得ですね!

優先事項

職場用の自キを持ち帰って完璧に整備したのに、家に忘れて来てしまい、F社のノートPCのキーボードを1日使うことになった残念な日のメモがこちらです。

「スイッチの打鍵感や筐体などの要素は、二の次、三の次といったところであり、やはり配列が一番の肝である。」

ノートPCのペチペチとした打鍵感やグラグラのキーキャップは、気持ち良くはないけれど我慢できる範囲内でしたが、レガシーなロウスタッガード配列は、左手がつらすぎて窓から投げ捨ててしまいたい気分でした。

そこで思いついたのが、以下の二択です。

A: レガシーなロウスタッガード配列 + あなたの考える最高に気持ちの良いスイッチ

B: あなたにぴったりフィットするレイアウト + ガサガサ・シャリシャリの謎スイッチ

うんこ味のカレーと、カレー味のうんこ。」みたいな質問ですが、皆さんならAとBのどちらを選びますか?

僕は自分が使いやすいレイアウトに早くたどり着きたいと思って活動しているので、Bを選びました。(こっちは後でスイッチを交換できそうだし😁)

Aってカスタムキーボードかも?

キーは上から押すだけだと思っていないか?

Sandyの使用感を記録しているメモに、次のように書き留めてありました。

「スペースキーとそれよりひとつ外側のキーのスイッチをTecsee Pudding Medium Linearに変更して少し低くし、一番外側のキーの角に親指がかかる感じにした。これで、キーの横から斜め下へ押下する具合にしたい。」

さて、これはどういう意味でしょうか?

今さらこんなことを言うのも恥ずかしいのですが、キーは上からだけでなく、斜めに押しても入力できます。
キーキャップの天面がシリンドリカルやスフェリカルになっているのは、指の引っかかりを良くすることに加えて、キーを多少斜めに押してもスイッチへ力を伝えるためでもあります。
これを拡大解釈すると「キーは斜めに押しても入力できる」という理論が導き出され、冒頭のメモにつながります。

この理論を実際の動作に応用したのが、次の動画です。
(指の動きが見えるように、ホームポジションから手をずらして撮影しています。)

(上の動画が見れない時はこちら

これは、段差をつけたキーの側面から天面の角あたりへ親指を当て、キーを押下している様子です。
親指を曲げて横方向に動かすだけで、下方向にキーが押し込まれています。

おや?先ほど導き出した理論は間違いですね。
正しくは「キーは横に押しても入力できる」でした。
なお、使いどころが限られるのでご注意ください。

使用しているスイッチは、低いキーがメモに出てきたTecsee Pudding Medium Linearで、高いキーはKailh Deep Sea Silentです。 キーキャップはG20プロファイルの1.25uです。

数日寝かせると命拾いする

基板の設計が終わったら、数日寝かせてから発注しましょう。
思いも寄らないミスが見つかるかもしれませんよ。

次項で紹介するSandyLPも、寝かせる宣言から数時間で凡ミスが見つかり、致命傷を回避することができました。

SandyLP(サンディ エルピー)のご紹介

今年の10月、左右対称ロウスタッガードな所謂Jones配列(※)の最新版としてSandyLP(サンディ エルピー)が完成しました。
※自分で「Jones配列」と言い始めたわけではないのですが、キボ界隈からそう呼ばれていて記述もしやすい呼称なので使わせてもらっています。

SandyLPビルド例

SandyLPビルド例

SandyLP基板裏面

特徴は次のとおりです。(詳しくはこちら

前作のSandy(サンディ)End Gameとして1年半ほど使い続けてきたのですが、その1年半で得られた経験を可能な限りフィードバックしたので、SandyLPが完成した瞬間から新たなEnd Gameが始まることになりました。

中身は枯れた技術ばかりで特に目新しいものはないのですが、RP2040の基板直乗せや、基板間の電気的接続をすべて金属スペーサーによる導通にしたことは、開発におけるチャレンジングな部分でした。

Choc V2スイッチの採用でキーキャップが干渉するのを心配していましたが、お気に入りのキーキャップは以下の組み合わせで使えており、助かっています。

今後はケースの設計やテンティングなどを研究しつつ、End Gameという長期ロードテストを楽しんでいこうと思っています。

皆さんもEnd Gameを楽しんでください!!


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