キーボード熱が少し落ち着いている話

Takeshi Nishio

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keyboard


この記事はキーボード Advent Calendar 2022とは無関係の記事です。

昨日の記事や明日の記事へのリンクはございません。
ご了承ください。


この数年、いわゆるEnd Gameと呼ばれるキーボードにたどり着くための活動を熱心に続けてきましたが、今年はその熱が少し落ち着いています。

開発関連のネタや新製品の情報などを追いかけることも無くなり、Twitterやコミュニティの閲覧もやめてしまっています。
「QMKのBreaking ChangeでRemapがやばい」という話もTALPKEYBOARDさんのニュースメールで初めて知るというありさまで、浦島太郎状態を存分に満喫しています。

QMK version
”0.16.9”で止まっているローカル環境のQMK

この記事では、キーボード熱が少し落ち着いた、その気分的なところを少し書いてみようと思います。

キーボード熱が落ち着いた理由

もちろん(?)、まだEnd Gameは手に入れていませんし、End Gameなキーボードについての熱い想いは持ち続けていますが、表立った活動が落ち着いたのは以下のような理由です。

Jonesの物理配列にハマりすぎて、欲しいキーボードがない

のっけから手前味噌で恐縮なのですが、自分が設計・開発したJonesの左右対称な物理配列の具合が良すぎて、欲しいキーボードが見つからないというのが一番の要因です。

Jones & Nora, symmetrical layout
JonesとNoraの左右対称な物理配列(ZをAより外側にして、右手側の記号を中央へ)

僕は”左右対称の物理配列であること”を最優先にキーボードを選んでいるので、
「ガスケットだ〜、金属ケースだ〜、PCプレートだ〜、無線だ〜、トラックボールだ〜、ThockだThockだ〜」
と謳われていても、
「ぁ、普通のロースタガ…(そっ閉じ)」
で終わってしまうことがほとんどなのです。

そんな中、とりあえずひとつだけ、3D系のGlove80を2月にバックして到着を気長に待っているところです。Advantage360は初回供給が少なすぎて無理ゲーでした。

Glove80
Glove80

満足できるパーツが揃ってきたので、いろいろ試さなくてもよくなった

満足できるレベル(※)のスイッチやキーキャップが揃ってきたので、新製品を取っ替え引っ替えして試さなくてもよくなりました。

2019年11月にErgoDashで自作キーボードデビューしたので、2年〜2年半くらいで揃ったことになります。

※満足できるレベル
うまく説明できないんですが、

現在使ってるパーツが、最も優れたものじゃないことを暗黙的にわかっているけれど、
新しいものを探して調べて買ってルブして組み替えて試打して結局ハズレで元に戻す、
という労力と時間と費用と喪失感を考えたとき、
今のまま使い続けた方が心の安定が保たれる、
と思える程度・基準。

みたいなところを意図しています。

棚のスイッチ
2年〜2年半で揃えてきたパーツ(の一部)

スイッチ

リニアのKailh Pro BurgundyKailh Speed SilverをメインのJonesで使用しています。
押し始めは40gくらいで、押し込んで底つきする前に60gを超えてググッと重くなり、しっかりと押し戻してくれるような特性が好みです。

良い具合にルブしてから、上下ハウジングをセメダイン BBXで固定してグラつきを低減させています。
どうせ二度とルブしないんだから、フィルムをちまちま挟むよりは接着しちゃった方が楽だろう、という安易な気持ちです。

サブのJonesで使っているサイレントのKailh Silent Pinkはノイズが多めで不満なのですが、ほとんど使わないサブ機なので、実質的には問題なし。

Noraでは、リニアのChoc Crystal Silverを使用しています。
Chocスイッチは選択肢が少ないので、タクタイルの有無と、好みの重さで決まってしまいますね。

キーキャップ

参考:プロファイル一覧

MX用ではDSSプロファイルが好みです。
KATの方が速く打鍵できるのですが、DSSはホームポジションに手を置いたときに心地よいので気に入っています。

Choc用ではシリンドリカル形状のMCCプロファイルが好みです。
あまり使い込んでいませんが、実はKailh純正のキーキャップが一番打鍵しやすい気がしています。(打鍵速度は一番でした)

GBしたキーキャップの到着待ちがいくつかあるので、しばらくは買わなくても良さそうです。(Wob系以外)
なんとなくタイミングが合わなくて、良い感じのWoB系には、まだ出会えていません。

End Gameが見えてきたので、闇雲な行動がなくなった

いろいろなキーボードを作ったり使ったりした結果、経験値がけっこうたまりました。
その結果、どんなキーボードが自分のEnd Gameになるのか見えてきたので、闇雲に情報を探したり、研究・実験用に買い漁ったりする必要がなくなりました。

End Game開発に向けて動き出したのですが、下調べの教材であるGlove80の到着までしばらくかかりそうなので、一旦保留になっていることも影響しています。(来年、2023年の夏までには届くかな?)

たまった経験値の例

カラムスタガ系の所感

手のサイズに合わないと、とっても打鍵しづらくなる。
設計者と自分の手の大きさが同じだったらラッキーだけど、そんなラッキーはまずない。

個人に合わせたカスタム設計が必須になるので、つらい。
実機の試打してから購入したいけど、地方民にはつらい。

Pangaeaによる救済!?

ロースタガ系の所感

普通のロースタガでもそこまで打鍵しづらいということは無いし、Jonesのような変則ロースタガ(2行目と3行目にずれがない)でも普通に打鍵できちゃう。
縦ずれ方向(カラムスタガ)のシビアさに比べて、横ずれ方向は手のサイズに対する許容範囲が大きい印象で、だいたいなんでもOK。
(さすがにオルソリニアは許容範囲外)

自然に手を置いたところにキーがあって欲しいので、Jonesの左右対称なロースタガが具合良い。

3D的な打鍵のしやすさが重要

ホームポジションから遠いところ、たとえば60%キーボードの1行目は背の高いキーキャップにするかスイッチ自体を底上げして3D的に配置しないと、指が届きにくい。

MXスイッチでは、行ごとに高さの違うCherry, KAT, DSS, MT3プロファイルなどのキーキャップを使うことで、3D的な打鍵のしやすさが向上。

Chocスイッチでは、普通に売ってるキーキャップだと各行が同じ形状しか選べないため、3D的にできなくてつらい。
Choc用に売られている3D的なキーキャップは値段がつらい(使用感はめっちゃ良い)。
自分で作るのは加工がつらい。
3D的な基板設計はとてもつらい。

MBK keycap, Modified for height adjustment
”QTYP”キーの打鍵しやすさ向上のため、MBKキーキャップに3D的な加工をおこなった例

キーピッチ(狭ピッチ)の所感

MXのキーピッチ(たて19mm×よこ19mm)でも不満はないけれど、けっこう余裕があるのでピッチを狭くして物理配列を最適化したい。
指の移動量が減って打鍵しやすくなるなど、狭ピッチによるメリットは多い。

Chocのキーピッチ(たて17mm×よこ18mm)はMXからの乗り換えでも何の違和感もなく打鍵できるし、もう少し狭いキーピッチ(たて17mm×よこ17mmくらい)でも少し使えばすぐに慣れる。

狭ピッチはキーを押し込んだときに手前のキーに指が当たりやすいので、スイッチのストローク(接点)を短くする方が良い。

狭ピッチ用のキーキャップ選びがつらい。
Choc用キーキャップがつらくてつらすぎ。(前項参照)

究極的にはフルカスタムの3D系へ

キースイッチが平面上に配置される2D的なキーボードで、キーの物理配列で縦横(XY軸?)を最適化することに限界を感じる。
平面上だけではどうしても最適化しきれない箇所が出てくるので、キーの高さを個別に変えて補おうと考えると、次に進むのは3D系。

自分の手の大きさ、指の長さや可動範囲に合うように3D的にフルカスタムするのが究極的なところ。
もちろん、腕や手首がフィットするパームレストも組み合わせて。
設計つらい。
製造つらい。
フルカスタムで試作たくさん資金つらい。
→ とりあえず3D系を体験してみるところから始めよう。
→ Glove80をバックした。

3Dプリンタは、それ自体が悩みの種でつらい。

既成概念・固定観念を破る

実現可能性はちょっと横へ置いておいて、普通じゃないところに何か良いものが生まれそうな気がする。

「アルファ部のキーを列ごとに幅を変えてみたら?」とか、
「四角じゃないキーキャップにしたら、もう少し縦横の最適化ができないか?」とか。

「もうそろそろ普通のロースタガやめませんか?」ってのは、ずっと思っています。言わないけど…

開発の保留で、他の趣味を楽しむ機会が増えた

開発が一旦保留になりパーツ漁りなどもしなくなったので、Horizon Forbidden Westなどのゲームをプレイしたり、Roland MC-101で音楽を作ったり、他の趣味で心が満たされる時間が多くなりました。

YouTube: Hirasawa?, Roland MC 101
YouTube: Hirasawa?, Roland MC 101

厳密に言うと、僕にとって自作キーボードは趣味じゃないと思っています。

キーボードは何か作業するときに使う道具で、快適に作業できるように具合の良いものを探しているけど、どこにも売っていないから自分で作るしかない、というのが僕にとっての自作キーボードです。

趣味と言うよりは、作業感が出てきちゃってるので、ちょっとつらい。
まぁ、それでもやめずに続けているってことは、自作キーボードが相当楽しいみたいです(笑)

まとめ

キーボード熱が少し落ち着いた、その気分的なところを書いてみましたが、

「今のところはJonesで満足していて、今後はEnd Gameの3D系キーボードに向けて進んでいくんだけど、教材がしばらく届かないので開発は保留中です」

という、単純な内容でした。

生存報告というか、死に損ないの悪あがきというか、何の意味があるのか自分でもよくわからない記事を、構想1ヶ月、執筆4日で書きました。
アドベントカレンダーに載せてみようかとも思っていたのですが、趣向がちょっと違う気がするし、それよりも何よりも記事を書き終えたのが12月29日で、もうあちらへは載せられませんので、独自に公開しております。

その他

遊舎工房さんで委託販売しているJonesとNoraですが、在庫限りで終売にしようと考えています。

ハードウェアの設計がちょっと古くなってきているとか、円安傾向で製造費がつらいというのが表向きの理由なんですが、びっくりするほど売れない(人気がない)ってのが本音のところです(笑)

ご愛顧いただいている皆さま、ありがとうございます。


この記事は、

で書きました。